ジンギスカン

その日は朝から羊だった。


 羊食うぞ、ジンギスカン食うぞ、羊だひつじ。そんなはちきれんばかりの羊な気持ちを心に抱いて
http://www5a.biglobe.ne.jp/~Genghis/
の来店レポートを余すところ無く熟読し、出かける店を決める。子連れなのでカウンターだけの店は×。整形ロール肉の店も×。おっとここは日曜休業だ。


そんなフィルタリングを重ねた結果決定した店が

ハーブ cafe ジンギスカン レストラン
カムイ亭
http://www.bw-tokyo.com/kamui.html

だった。


目的地は家から約30キロ、メモった住所と電話番号をカーナビに入力して目的地決定、到着予想時刻はおよそ一時間後。行った先に駐車場はあるだろうか、店の席は空いているだろうか。そんな不安を抱えつつ、羊を食う為に都心を車で一時間走る。


そうしてたどり着いたカムイ亭。店自体に駐車場は無いが、店の50m程先にコインパークが見える。駐車場は確保。車を停め、期待に胸を膨らませ、店に向かう。
席は空いているだろうか、と覗き込んだガラス張りの店は割とこじんまりとしている。七輪が置かれたテーブルが5,6席だろうか。おっと、入り口に近い席が一つ空いている。ラッキー。やっと羊が食えるぞ!と、意気込んで店の扉を開ける。


と、扉をあけ切るよりも早く、年配のおじさんが扉の隙間に入り込むように現われる。

「すみません。いっぱいなんです」


え?
何を言われたかを理解するのに流れる時間。
店の扉は、俺の脳が入力された音声情報を処理するよりも早く閉じられていた。


1時間かけて走ってきたのに。
数分間、店の前で未練がましくメニューを眺めたり、あいている席を恨めしそうに眺めたりしたが、やはり未練が断ち切れず、もう一度店の扉を開く。
未練がましいのはわかっちゃいるが、朝から募った羊ごころが収まらない。


「そこの空いてる席、予約ですか?」


「いっぱんなんですよ、すみません」


しかしむなしく散ったのでした。
気のせいかもしれないが、おじさんはなんか迷惑そうに見えた。


結局羊にはありつけず。
空腹も頂点近かったので、最寄のガストへ。
ガストならたくさんあるのに、こんなとこまで来てガストかい。

ガストの注文はなかなか出てこない。
なんだか寂しく、悲しくなってくる。
予約なら予約席の札おいとかんかんかい。またいらしてくださいくらいいわんかい。迷惑そうなかおすんなや。と、予約電話を入れない俺が悪いのを棚に上げ、心の中で愚痴っていた日曜の夜だった。