お迎え

 前日から、「今日はお迎え」で、なんだかどきどきしていた。まるで、十代の頃の「明日はあの子とデートだ」という感覚。2泊も完全に外に出すのははじめての経験だったので、親の顔を忘れたりしてないだろうか、とか、余計な心配をしてしまう。


 朝の9時に某孤児院に行くと、若いシスターが応対してくれる。「聖職者」というフィルターがかかっている為か、とてもいい人に見えてしまう。いや、実際にイイヒトなんだろうけど。その若いシスターが、こちらでお待ち下さい、と、応接室に案内してくれる。


 孤児院の応接室なんて、こんなことが無ければ多分一生来なかったと思う。応接室の棚には、数々の盾やトロフィーが並んでる。施設の子供たちが、いろいろなスポーツ大会で獲得してきたもののようだ。一番古いのは、自分が生まれた頃のだったり。歴史のある施設なんだな、と思いにふける。


 20分位して、別の保育士の方が、息子を連れてきてくれた。どうやら、「9時」と伝えていたのが、「午後9時」と思われていたらしく、お迎えの準備が出来ていなかったらしい。久しぶりに見る息子の顔。どうやら親の顔は忘れていなかったらしい。嬉しそうな顔をしている。


 3日間、よくがんばったね、と、帰り道にごほうびとして好物の水羊羹を買い与える。我ながら甘いと思う。