手術の日

 朝、息子に今日学校で必要なものを持たせ、学校に送り出す。


 粘土、新聞紙の下敷き、プールの用意、そして家の鍵と、ちゃんと持たせた。ハンカチ、ちり紙、ランチョンマットOK。よし完璧だ、と送り出してからしばらくは思っていたが、プールのある日は検温してOKのはんこを押すんだっけ? 昨日の夜、やりのこしていたらしい宿題も見てあげられなかった。そういえば学校からの連絡帳も見ていない。抜けだらけである。


 送り出してからしばらくすると、玄関のチャイムが鳴る。インターホンからは「旗をお持ちしました」と、女性の声。なんだろうと玄関に出て話を聞いてみると、明日の朝、通学路に旗を持って立つ「みどりのおばさん」の当番だ、ということらしい。そういえばそんな制度があったなぁ、と思い出すも、さてどうしよう、明日は有給とっていないし、次に旗を渡す相手もわからない。妻が入院してしまって、と、事情を話しながらうろたえていると、じゃあ明日、私やりますね、と、当番を引き受けてくれた。素直にとてもありがたい。退院したら、お礼しなきゃ。



10時からは、息子が通級している特別学級の保護者会に出席。2学期の指導方針や、個人面談の日程についての説明のあと、「懇談会形式」で、トークタイム。運動会やら学芸会、林間学校なんていうのは、障害のある子達には大きな壁だよね、といった話。11時過ぎには終わると思っていたが、12時ぴったりまで終了せず。


 保護者会終了後、急いで病院に向かう。手術が2時からになったから、1時くらいには来てね、と言われていたけれども間に合わなかった。しかし、病院のオペ室が、前の人の手術が長引いていたために妻の手術は2時には始まらない、ということになったらしい。結果オーライ。昼前から来てくれていた義母に息子の世話を頼み、付き添いをバトンタッチ。


 オペ室へは2時50分に入る。だんなさんには伝えることがありますので、そのままお待ちください、なんて看護師さんに言われるわけだが、どうも悪いことを伝えられるんじゃないかと身構えてしまう。伝達された情報は、何てことない、全身麻酔を含めた麻酔に1時間、その後手術なので、完了時刻はまだわかりません、執刀医から説明があるときはこちらの待合室に入ってください、といったようなことであったが。


 前回の手術でもそうだったが、ひたすら待つ時間というのはとても長い。本を読む、ゲームをする、居眠りをする、コーヒーを買ってくる、コーヒーを飲む、居眠りをする、と、2時間くらいが経過した頃、先生から説明がありますので、こちらにいらしてください、と看護師さんに呼ばれる。


 詳しいことは伝えられてないので、先生から説明を受けてください、といわれ待合室に向かう時間が長く感じられる。
 胸膜への転移はありませんでした、こんな感じで筋肉に包まれていたので広がったいなかった様子です。といった説明を受けてとりあえず一安心。これから傷口を縫って終了です、と聞かされて一旦病室前のベンチに戻る。


 それからさらに30分くらいが経過した頃、エレベーターから妻を乗せたストレッチャーが現れる。すでに全身麻酔は切れているようで、痛そうに涙ぐむ妻が横たわっている。まずは義母に電話をする。義母は2時から始まると思っていたので、3時間たっても連絡がないことにずいぶん心配していた様子。もうすこし早く電話を掛けてあげればよかった。